Japanische Klassiker mit Furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme
彼の建立した法性寺は、彼自身が最後のかくれ家であろう。そのように影のうすい兄忠通に奉仕していて何となる。立ち寄らば大樹の蔭という諺もあるに、なぜおれの心に従わぬぞ。兄を見捨てよ、おれに靡けと、頼長は聞くに堪えないような侮蔑と呪詛とを兄の上に投げ付けて、しいて玉藻を自分の手にもぎ取ろうとしたのであった。
仲のよい兄弟のあいだでも、これだけの訴えを聞けば決していい心持はしない。まして忠通と頼長とはその性格の相違から、うわべはともあれ、内心はたがいに睦まじい仲ではなかった。頼長が兄を文弱と軽しめていることは、忠通の耳に薄々洩れきこえていた。自分が氏の長者となったに就いては、器量自慢の頼長が或いは妬んでいるかもしれないという邪推もあった。きのうの饗宴にもすねたような風をみせて、碌々に興も尽くさずに中座したということも、忠通としては面白くなかった。それらの事情が畳まっているところへ、寵愛の玉藻からこの訴えを聞いたのである。忠通はもうそれを疑う余地はなかった。
「憎い奴」
彼は腹のなかで弟を罵った。酔いの醒めない頭はぐらぐらして、烏帽子を着ているに堪えないほどに重くなってきた。