Japanische Klassiker mit Furigana
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ねぎさまみやた
禰宜様宮田
宮本 百合子
Lesen Sie 禰宜様宮田 (ねぎさまみやた) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 34.662 Zeichen · 68 Bildschirme
ではないほど、彼の権威は微かであった。
「ヘッ! 俺ら家のとっさんか……」
他人の前でも、地面に唾を吐きながら、彼女の持っているあらゆる侮蔑を何の隠すとてもなく現わしても、不思議に思う者はない。
家柄は禰宜様――神主――でも彼はもうからきし埒がないという意味で、禰宜様宮田という綽名がついているのである。
人中にいると、禰宜様宮田の「俺」はいつもいつも心の奥の方に逃げ込んでしまって、何を考えても云おうとしても決して「俺の考」とか「俺が云ったら」というものは出て来ない。けれども、野良だの、釣だのに出て来て、こういう風に落付くと、彼はようやっと「俺」をとり戻す。
そして、だんだん心は広々と豊かになって、彼のほんとの命が栄え出すのであった。
今も長閑な心持であたりの様子を眺めているうちに、禰宜様宮田の心は、次第に厚みのある快さで一杯になって来るのを感じた。
そして、平らかな閑寂なその表面に、折々雫のようにポツリポツリと、家内の者達のことだの、自分のことだのが落ちて来ては、やがてスーと波紋を描いてどこかへ消えて行ってしまう。
沼で一番の深みだといわれている三本松の下に、これも釣をしているらしい小さい人影を見るともなく見守りながら、意識の端々がほんのりと霞んだような状態に入って行ったのである。