Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
扇ヶ谷では、中門から玄関へ打水して、憲房自身、出迎えていた。
供も連れぬ彼の姿に、憲房はその軽々しさにあきれたが、これがこの甥の良さだというところも買っている。召使にいいつけて、すぐ風呂へ入れ、汗臭い狩衣を衫衣にかえさせるなど、まるで野遊びから帰った子にするような世話だった。
そして、水のせせらぐ一亭に夕蚊遣して、夜食を共にし、その後も、杯だけをお互いの前に残して、涼夜をくつろいだ。
「伯父上。……評定所やら、御政治向きの面もすべて、ここはだいぶ、お閑になって来たらしゅうございますな」
「されば昨年来の一件も、まず一と落着のかたちで、ほっとしておりまする」
「が、奥州の騒乱は、まだ片づきますまい」
「あれには、柳営でも手を焼いておりますな。近く、工藤祐貞などの新手がまた加勢に派遣されましょうが」
「中央の御処理も、じつはそれゆえの御寛大なのですか」
「それもあるし、大きな声ではいえませぬが、幕府の策としては、どうしても将来、今上後醍醐の譲位をやむなくさせて、御位を他の君に……という大計の方へ傾いたことにもよるかと思われます。これは、ここだけの話ですが」
「なるほど……」