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Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme

Aozora Bunko

ともあれと、彼はべつな小部屋へ彼女を誘い入れた。

「内侍。そなたのいうに従えば、そなたもこのままいることを、承知のうえで今宵これへ参ったように聞えるが」

「はい。もしお厭いなくば」

「それがわからぬ」

「どうしてですか」

「みかどのお心も」

「でもお上には左中将との一約、ぜひもなければと私へお言いふくめでございました」

「約束と仰せられて」

「はい」

「……約束とな」

あとの呟きはほとんど口のうちだった。義貞は心のちぢむ思いがした。忠顕から洩れ聞いていた叡慮とはやはり一時のお戯れではなかったのか、と。

どうしよう。急に彼は惑った。むかしには源三位頼政が菖蒲ノ前を主上から賜わったというはなしはある。が、自分の上にそんな僥倖がめぐんで欲しいなどとは思いもしていなかった。――忘れかねるという想いを率直に忠顕へ洩らしただけのことである。もしこの勾当の内侍がみかどにとって寵幸もただならぬ愛妃であったとしたら、それをねだッた自分はいとも罪深い者になろう。恐懼といっても言い足りはしない。ただただ申しわけないかぎりである。

彼のそうした容子がふと内侍を不安にさせてきたのかもしれなかった。