Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
今朝。
春眠、暁ヲ覚エズ――の春の朝でもあるが、義貞はすかっとした上機嫌で、近侍にたいする語調まで快活だった。
「なに。義助(脇屋)や貞満(堀口)らが、はや表の間に詰めて待っているというのか。待たせておけ、待たせておけ」
いちど、書院に姿をおいたが、こう言ってまた対ノ屋の奥へ遠くかくれてしまった。きのうまではなかった部屋の色彩や物の香が、美しいあるじを持って、春の日影までを新たにしていた。
「内侍、さびしかろ」
「どうしてですか」
「こわらしき男ばかりだ。内裏のさまとは、おそらく余りな違い方」
「それがかえって、そぞろにうれしゅうございます。人の中に立ちまじって、自分も世間のひとりになったことかと」
「いまに街も見せてやる。輿にかくれて、仁和寺へも行ってみい。清水の春もよい」
「いえ、ただもうこうしているだけでも」
そのあかるい黛が、ふと義貞に、ゆうべのある一ときに顰めた黛を思い出させた。たましいは人形にうちこまれ、彼女は人間に返っている。彼女もまた今朝のひとりの男を自分の生涯のそとにおいては眺められなかった。
「内侍、したくは」
「お待ちしておりました」
「妻と朝餉をひとつにするなどは、義貞、ほとんど忘れていたことだったな」