Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
ただ恩智をはじめとし、妹聟の服部治郎左衛門元成、一族の松尾、南江、和田のともがらや、郷土の若殿ばらが、黒い板じきにずらと並んで、
「お帰り」
と一様な姿をみせ、それにたいして正成が、
「何事もなかったか」
と、一顧をみせて通るのが、せめてここにある彼の家族的なくつろぎといえばいえる。
総じて、彼の位置は、官職にしても大きく昇進したはずだが、暮らし方はいぜんむかしの河内の一豪族とさして変った風もなかった。あたかもこれを家憲としているかのようにである。
そこで公卿たちのあいだには、
河内のつくね芋殿
などという蔭口がまま聞かれた。どろくさいという意味だろう。正成自身もそのことは知らなくはない。
しょせん自分は地中の鈍根
と、みずから自己の性をどうしようもないとして、世事の毀誉褒貶などは一こう気にもとめないふうだった。
しかし昨今、上下とも、戦勝気分にわきかえっている洛中にあって、ここ一門だけが、何とも列外におかれた感で、正成はともかく、老臣若党ばらは、忿懣やるかたないものを鬱々と抑えているにはちがいない。
過ぐる兵庫合戦の日においてである。――打出ヶ浜から御影へかけての大事な一戦の日に――理由なく後陣へさげられ、そのまま不面目な帰洛を余儀なくされていたのだった。