Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
どこかでは、刀鍛冶の澄んだ鎚音がひびいている。行くほどに、「後藤助光」と木札を打った一軒の門もながめられた。さらに行くと、もっと軒ばを接しあった長屋の一聚落が騒音とともにあった。――染屋、革はぎ、飾り師、小札鍛冶、弓師、鎧師など、すべて武具の一大工廠ともいえる職人町の横丁だった。
「おい、坊主坊主」
「え?」
「どこへ行くんだ。こんなところへ無断でへえって来ちゃあいけねえよ。無用の者入るべからず、と長屋木戸に立ってる札が見えねえのか」
「おっ。……禿鳶だったな、おまえさん」
「なにを」
「めずらしい」
「ふざけるな。乞食坊主に知り人はねえや。おれはここらの具足師をしめくくッている打物屋の鳶七ってんだ。てめえらに禿鳶なんて馴れ馴れしく呼ばれてたまるか。さ、出ろ出ろ、木戸の外へ」
「わからぬかな、おれの顔が。おい禿鳶、六、七年ほど前を思い出してみな」
「え。……?」
「柳斎だよ、おれは」
「あっ、あの」
「当時はここの一軒に住んでいた具足師の柳斎だ。変ったなアこの界隈も」
「これや驚いた。変ったなあ旦那の方ですぜ。どうしてそんなお身なりに」
「笑ってくれ。命が惜しくなったんだよ」