Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
「さすがは、赤橋殿の妹聟、うわさのごとく、なかなかな器量人か」
と、衆望の観るところにもなっていた。
ゆらい疑い深いのは武族間のつねだ。それが未見の尊氏へ、どうして、こうつよい信頼を九州では高めていたのか。
もっとも、これまでに、彼らの尊氏観が固まってくる根底には、それとの結び付けとなった重要な前時代の前提がないではない。
何かといえば。
その胚子は、すでにこの地で亡んでしまっている前の九州探題北条英時が蒔いておいた徳望だった。
英時は、探題十余年の在職中、治め難いこの九州諸豪のうえに在って、よくその平和を維持していたばかりでなく、庶民の評判もよく、その人柄はわけて皆から親しまれていた。
が、それほどな英時も、大本の鎌倉幕府の倒壊に会してはぜひもない。保身的な豹変者、元来からの宮方勢の包囲のうちに、あえなく自刃をとげてしまった。が、菊池党のような正真正銘の宮方をのぞいては、
「惜しい人をば」
「あえないことに」
と、後々ではみな悼みもし、英時の善政なども、今さら慕われていたことだった。
とにかくそこへ尊氏の擡頭だった。彼の名がようやく武門の焦点となるにつれ、はしなくも尊氏という人物が、この九州では、特に大きく、彼らの意識にのぼって来た。