Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
「火を放けろ、まず、やぐら下から一面に、火をかけろ」
と、凄まじい命を下した。
こうして、彼は有智山寺へ駈け入り表の廻廊に坐りこんだ。一族郎党百数十人も共にそこへ居ながれた。とりでの炎は、みるまに、あたりを熱風にし、大廂の裏がわを舐め廻る。――するうちに、妙恵の顔がニタと笑っていた。――彼方のやぐらの上で、炎に巻かれながら躍り狂ッている娘婿の影をその目が見たからであった。やがて、煙の中の蚊のごとき人影はみな仆れ、やぐらも音をたてて轟然とその火の柱を燃えくずした。いちめん、火の塵と火の風が、有智山寺の縁を吹き巻いた。
妙恵以下、すべて、そのときもう自分の刃で、身を伏せていた。火も熱くなく、冷たくもない姿だった。
妙恵の末子、頼尚には弟にあたる宗応蔵主は、まだいと若い仏門の人だが、父に殉じて、おなじく自殺した。しかし沙門の人だけに、武士の列には並ばず、本堂の御厨子の前に、蔀の格子戸や薪を積んで、仏者らしい火定のかたちをとって死んだ。
――あくる日もまだ余燼は冷めきっていなかった。が、寄手の大将菊池武敏は、さっそく、ここへ来て、妙恵入道以下の黒焦げの死体を篤と実検して、そして言った。