Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
はいなかったものなのである。
が、屈強な旗本輩や陣中僧の日野賢俊らはもちろん一刻もそばを離れてはいない。そして、上陸地点からやや北方の、ひがし池尻村の宝満寺の林間に、ひとまず仮の床几をすえ、ただちに須磨方面にある直義との連絡をはかる一方、さきに陸上の浜手隊をあげて新田軍を追いしたって行った少弐頼尚からの反り伝令の報告などをききながら、寸時の休息をとりかけていた。
と。その床几の人の前へ、
「ご一服」
と、女武者の棗がいま、ひざまずいて、一碗をささげていた。
寺門のうちへ走って、庫裡から請い求めてきたものでもあろうか。
「お。白湯か」
と、尊氏が碗を手にふくんでみると、それは梅香湯だった。梅酢湯に甘味を加えてよく雨期明けや暑中にくすりとして禅家などで用いているものだった。
「これはうまい。ときにより、どんな甘露もおよばぬな」
「おなかにおよろしいものと聞いております」
「そうだ、船中の蓄え水には孑々がわいていた。これで腹の中の孑々も死ぬだろう。……だがまだ」
と、彼はすぐ立って、数歩あるいては数歩もどり、心でしきりと待つものでもあるか、たれへともなく、つぶやいた。