Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
会下山、さいごの死所は、そこを一蓮の台にして――と、暗黙のうちに、一同これへ目ざして来たらしい。
くるしい。たれの呼吸も奄々と見えぬはなかった。からだじゅうに干乾びた黒い血や生々と濡れ光ッている鮮血は負ッていたが、どこが痛いと知る感覚はなく、ただもうせつない。
そして、いまは、山上の風恋しげに、
「敵が来ぬまに」
「一刻もはやく、かなたで」
と、一蓮の丘の死の座へと、喘ぎ喘ぎ、辿っていた。
が、馬も疲れきッて、ここでは傷負い馬などもう一歩も前へ出ない。正成は鞍を下りた。ほかの将も騎の者はそれに倣って馬を捨てた。そして追いやるにみな鼻ヅラを撫でて宥り放つふうだった。こんな中であったが冗談に「達者で暮らせよ」と、尻を打ッてやった者もある。だが馬も跛行をひいて駈け下りて行ったとおもうと、すぐ草むらに仆れ、そのまま起ち上がらないものもあった。
「…………」
愁然と、それへ一顧の憐れみを送っているもあり、また「はや身軽」と勢いづいて登って行く者もある。すると、その先頭でとつぜん大きな声があった。「敵だッ!」と下へ教える。山上にはすでに斯波高経の山手隊の一部がいてそこを占領していたのである。