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Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme

Aozora Bunko

どこかで、蜩が啼く。

部落を包む数万の敵も、ここの大床にも人はないかのようだった。しいんと張りつめた板敷きに五十一人の膝が二列に並び、そのあたりへ、申ノ刻(午後四時)ごろの薄ら陽がななめにさして、それがなお血曼陀羅のような色光を加えていた。

「ここだけではない。今朝から正成の旗のもとに死なせた者数百人、金剛千早の日からかぞえれば、さらに数千」

それらの無数な精霊に内心で直面するとき、正成はいつもそそけ立ッた面もちになる。ひとりの犠牲も無にしてはと詫びるのらしい。そして彼の手は具足の緒を解き、おもむろに腹巻を脱いで横においていた。

「はや、ご用意ぞ」

と、知った人々は、思い思いに、坐り直した。或る者は、対い合った。刺し交えを気組んで刀のさやを払った。

正季もまた、腹巻を解いて、手に短刀を抜く。そして兄の顔を横に見た。今生の別辞から今日までの思い出が、微かに笑うかとも見えるその顔の中にあった。

「兄者、おさきに!」

「急ぐな、正季」

正成はまだ迫られている容子でもなかった。ゆったりと死寸前の心を心のうちで遊ばせているかのようにさえみえる。

「こころみに訊きたい」