Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
ここへきて、ふたたび、戦火の糜爛がひろがり、範囲も西は山崎、鳥羽伏見。みなみは木幡、奈良ぐち、阿弥陀ヶ峰。ひがしは近江から北は若狭路にまでなって来たには理由がある。
叡山の行宮から発しられた諸国への大号令が、ようやく、こたえをなして来たことと、慢性的な長陣となってきた中央の戦状をながめて、九州、中国、四国、紀南、北陸、全土の宮方がまた宮方へ起ちはじめ、ぞくぞく、行宮のもとへ馳せさんじる武士もふえていたからだった。
「おや?」
それとは、まったく関連のないものだが、尊氏はふと、眼にとめて、範国へたずねた。
「範国、いまのは誰だ。いまここをチラと覗いて、彼方へ去った若い女は?」
「ぞんじませぬ」
範国は、言ったが、
「いや、造作もないこと、行って問いただしてまいりましょう。――この御営内へ、わけて戦時、え知れぬ若い女が、立ち入ってくるなどは、油断がなりません。敵の細作(まわし者)やらも知れぬこと」
と、すぐ足ばやに、軍幕のそとへ出て行った。
まもなく、彼は、もどって来たが、言いしぶった。
「女は、怪しき者ではございませんが、ちとどうも」
「直義をたずねてきた女か」