Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
三位の廉子や准后づきの女房らが、そのたび御座ノ間のおあかりに風ふせぎの工夫をしては、灯し直すが、つけると、またすぐ消されてしまう。
「もうよい」
みかどは、仰っしゃって。
「こうしていよう」
と、おあきらめの御容子で、暗黒の玉座の机に、夜じゅう沈思のお姿を凭せておられるなども、めずらしくないのではあった。
こんな晩も、どこかでは戦いがたたかわれている。
枯葉のように、人が死に、家が焼かれ、山野では、無辜の民が泣いていよう。餓死者すら出ているにちがいない。
お眠りになれぬ夜がつづいた。御衣を解いて眠らずにいることだけでも、せめて何かへの、申しわけとしておられるのかもしれなかった。とにかく、めッきりお痩せになり、おひげものびた。ただ眼光だけがいよいよおん目のふちにくぼをつくって、炯々と、それはたしかに全生命力をあげてたたかっている者のみにある異様なるお眸だった。
「これしきの艱苦などは」
後醍醐は、よく廉子には仰っしゃっている。
「のう、隠岐ノ島にいたあのころを思えば」と。
だがいまは、御自身だけの忍苦ではすまないのである。また後醍醐は、すでにこの戦局の非を、たれよりもよく知っていた。