Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
――その三昧一念な背を見ると彼はぜひなく遠くにそっと坐ってしまった。そして機をうかがっていたが、近づいていえる機はなかなかなかった。――誦経がすむと尊氏は半跏趺坐(片あぐら)のかたちをとり、丹田(下腹)に印をむすび、呼吸をひそめて、いつもの坐禅に入ったまま、またしばらくは他もなく自己もない“面心面仏”の人そのものになりきっている姿だったからである。
「…………」
いつか堂の欄間に朝の陽の刎ね返りが映していた。尊氏はやっと、趺坐をかえて、頼春をふりむいた。
「どうした? 門外のことは」
「お味方の勢にござりました」
「味方」
「は。……戦場より抜けてこれへ急使としておいでなされた下御所(直義)さまのお旗本、上杉伊豆守重房、須賀左衛門、そのほか十騎ばかりの」
「ならば門をあけてやれ」
「お目通りへ請じてもよろしゅうございましょうか」
「む。二人だけを」
「では、すぐこれへ」
頼春は、飛んで戻った。そして山門をひらくと、破れ鎧、あるいは乱髪、または負傷の足をひきずるなど、惨たんたる敗戦の泥土をそのまま身に持った武士大勢が、ぞろぞろ霜を踏んで境内へ入って来た。
尊氏は道服に袈裟すがた。