Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
中書ノ宮をはじめ長袖の公卿大将ばらは、うろたえに右往左往し、打物すら持ち忘れてただ逃げ惑った。そして手もなく討たれてゆく将も二、三にはとどまらなかった。
何か、地異天変のような錯覚にもとらわれる。
七千人の旗営が一瞬にどうかしてしまったとしか見えない。――どろどろと熔岩のような黒いものが、山の中腹から逃げまろび重なりあって、はるか麓まで押し流れて行く。すべてそれは、人間と馬と、また新田勢や中書軍の旗差物などだった。
「まずかった」
脇屋義助。兄の義貞にまさるこの勇将は、どこかで地だんだ踏んだことだろう。
「これというのも、足手まといな中書ノ宮や、公卿大将の大勢を、上に奉じていたためだ」
と、くやしがったにもちがいない。
およそ兵略として、夜の陣を、山腹の急坂において眠るなどは、法外な無知である。――と知りつつも、つい竹の下にとどまったのは、足柄明神や民家の屋根もあるので、宮以下の陣座の便宜につい惹かれての処置だった。
「もう追いつかぬ!」
彼の号令も、今は一兵の足さえ踏みとどまらせる力にはならなかった。――敵は、金時山を負って、逆落しに、猛火は山風を孕んで、これも味方のあたまからおおいかぶさってくる。