Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
あれなる小高い岡へ旗を立て、義貞ここにありと味方へ知らせろ」
そこは三島に近く、西に黄瀬川をのぞんだ土狩の岡だった。
船田ノ入道はまっさきに登って行って一引両の幟を立て、また螺手に命じて貝を吹かせた。つづいては堀口、世良田、里見などの一族。さらに義貞のそばを杉原下総、高田義遠、篠塚伊賀守、川波新左など――新田十六騎――の旗本がとりまいていた。
けれど、味方をよび集めるための旗陣と貝の音は、かえって敵を求めてしまった。
黄瀬川の向うには、足柄峠から脇屋義助と中書軍とを追いくだしてきた尊氏の麾下がまっ黒にみえ、またうしろからは、直義の兵馬が追ッかけて来、岡は孤立に陥りかけた。
もちろん、空しく待ってはいない。河原の低地、背面の平野ではすでに激戦を展じている。
烈風なので、矢は用をなさず、どこでも騎馬歩兵の接戦だった。そのうち国府(三島)方面から黒煙がのぼりはじめた。官軍にとっての重要な本営地である。義貞は愕然とした。
「や、や。退路を断った敵があるぞ!」
もはや三島の内からも寝返り軍の出たことは疑ってみる余地がなかった。いや今暁来の裏切り者が、誰と誰であったかも今はほぼわかって来た。