Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
と、意外そうに反問した。こう反問するあいだに、頭を整理していたのでもある。
あれは、初めて鳥羽口から軍をつれて入洛した日であった。眉目よい一少年を連れた路傍の垂衣笠の一女性を、高氏は、その晩、夢にもみたほどだった。
しかしその幻覚は、しいて今日までは打消していた。
――あれほどかたく、時の来るまで待てといましめて、三河の一色郷に隠し、生みの子の安穏な育ちを、そっと守らせておいたはずの藤夜叉だ。
その藤夜叉が、子を連れて、しかも戦陣のこの都へ、だまって出て来るはずはない。
鎌倉における自分の立場も、またいま、不知哉丸を高氏の長子として表面に出すことのむずかしさなども、充分、得心していたはずの彼女である。
だから、いつぞやの垂衣笠は、人ちがいにちがいない。日ごろに抱いていた幻影がふと路傍のゆかりもない母子にかさなって見えた錯覚だろう。そう否みつつ忘れかけていたところなのだ。それをいま、仲時の話にくつがえされたので、彼のあたまの紊れもぜひなかった。
「して、いつ頃ですか。その母子が、あなたを頼ってまいったのは」
「いや」
仲時はかろく否定する。
「あれは、正月早々でしたが、しかしこの仲時を知って、頼ってこられたわけではない」