Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
「しゃッ」
能登は狂気したように、体じゅうの凄気で自分の耳をおおった。
「そ、そんな、たばかり事にたれが乗ろう」
しかし、本能的に、能登はその行動を思うせつな、無意識に後ろを見た。すると、いなみようなく、眼にみえたものがある。
けれどそれが、どんな人間なのか、幾人ぐらいなのか。また、後ろばかりでなく横の木蔭やらそのほかにもまだ居るのか否か。そういうことまでは見さだめる余裕もなかった。というよりは、帝のおちつきぶりと思いあわせて、全身、咒縛にかかったような恐怖にすくんでしまった以外のものではない。
「能登。残念か」
「む、む」
彼は唸った。
もう能登のからだにあった殺意の棘は全部自身の防禦に変っていた。虚勢すら持ちきれない浮き腰な眼くばりなのだ。
「さても下郎の浅智恵とはそちのこと。だが、おののくには当らぬ。そちを斬るはやすいがここは一命を助けてとらす」
「…………」
「北条の手下としては、忠義なやつだ。また欲心のためでもあろう。一領の大名ともなって都へも出、宿の妻には、小宰相を側においてみたいなどの、欲望でもあったろうに」
「やっ、それまでを」
「小宰相すら非を悔いておるに、なんでそちの眼は世にめくらなのか。