Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
力士だといったら誰もほんとうにするだろう。かたい肉むらが赭ら顔の両顎にたっぷり張ッていて、大きな鼻の坐りをよくしている。
なんとも貪欲な人相だが、しかし毛虫眉をかぶッた切れ長な眼は細く針のような底光りをかくしていて、しじゅう意識でえびす顔を作っており、それがこの人物の食えない甘酸ッぱさをまた妙に発散している。そして精力的で傲岸な体臭が一見、相手を押圧せずにおかないものとなっている。
おや?
道誉ですら何かこの男を見たとたんには、意味なく気押されたかたちでなくもなかった。「――足利家にはこんな侍もいたのか」と眼をみはっただけでも、いやというほどな印象を第一に拒めなかった。
「……これは」
男の武者烏帽子と、黒い狩衣の両袖は、いやに仰々しく、道誉の前にヒレ伏して、
「長々お待たせ申しておざる。ただおひとりここへおいて、おかまいも申しあげず、いやどうも、ご無礼を」
と、わび入った。
道誉はすでに、ごつんと来ている。そんな慇懃ぶりなどに用はないといった風で単刀直入に言って返した。
「ではすぐ御病間へ案内してもらおうか」
「いや、主人よりは、御前てい、ただ、何とぞ、よしなに御披露を、とのことにござりまする」