Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
「承知いたしました」
「よし、それで第一の条件はすんだ。が、まだあるぞ」
「まだ、なにか」
「誓書を出せ」
高時は声を大にした。
「わが祖廟、北条氏にたいして、ちかって異心をはさみ奉らずというむねを、熊野牛王の誓紙にしたためて差出せい」
これはいやだといえる筋あいのものではない。けれど侮辱ではある。出征の大将すべての慣例ではないからだ。高氏が憤然とするかどうか。諸大名はみな、彼の鬢の毛のふるえも見おとすまいとしているような凝視だった。
「なにかとおもえば」
高氏は硬めていた体をほぐして胸を上げた。そして面には微笑に似たものをもって、はじめて、高時を正視した。というよりは、あわれむような深い眼ざしをじっと凝らして、
「何のむずかしいことでもございません。さっそく帰邸のうえ、沐浴して神文を相したため、明朝、鎌倉表出発のみぎり、自身、台下へささげ奉りましょう」
と、明晰にこたえ、
「諸般の支度も、これからでございますゆえ、恐れながらこれにてはやおいとまを」
と、さいごの拝をした。そして高時のうなずきを見るなりすぐ座をすべった。
供がしらの侍が、
「お帰りいっ」
と大きく奥へふれこんだ声は、大蔵の足利屋敷のうちを、異様なまでにどよめかせた。