Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
いちども愚痴めかしたことなどなかった。
「だのに、自分は」
と高氏は身に責められる。自分はこの義兄をあざむいて来たにひとしい。いまもまた、だまして立つのだ。
北条一族中でも、もっとも北条血液の濃い正しい赤橋家である。あくまで守時は祖廟を守り抜くだろう。しょせん、明日は敵味方とわかれる人だ。高氏は残して立つ妻以上に、守時に同情した。なろうならこの人だけには何もかも打明けて、あやまりたいような理性の中の妄想にとり憑かれた。
「殿……」
声に気がつくと、あたりは銀屏の映えより明るい朝になっていて、登子が両手をつかえていた。もし瞼の腫れさえなければ花嫁の朝ともみえる朝化粧の襟が白かった。
「はや、お時刻のよしでみな揃うておりますが」
「むむ」
と、守時の方を見て。
「では、赤橋どの、出陣の式の大床から、すぐそのまま立ち出でます。よろしく留守の事どもを。またおわずらいでも、彼女の身を」
明けがた、母の清子と共に持仏堂へぬかずいたとき、高氏は祖先への報告も、母との別れも、すましていた。
すでに出陣の式だが、いまは言いおくこともない。土器の神酒に唇をぬらしただけですぐ起った。