Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
その良人について、登子は、千寿王の手をひき、留守役の紀ノ五左衛門らと共に、中門へ出て見送りにたたずんだ。
こうして一族は、戦場へ。
妻は、実家預けに。
また子は子で、幕府の監視下におかれ、祖母はひそかに足利ノ庄へ落ち行くなど、三方四方への別離であったが、たれも泣いてはいなかった。もう泣くなどという平常心は誰の顔にも遠くになっていたのである。
「おねがいする」
高氏はここでまた、赤橋守時へ心からな頭を下げた。そして留守役の紀ノ五左衛門へも、
「たのむぞ」
と、かさねて言った。
馬出しの広場では、はや貝が鳴っている。高氏、直義のそばへも馬が曳きよせられた。高氏のは、螺鈿の鞍に朱総かざりをした黒駒だったが、出門まぎわに荒れ狂ってひどく郎党たちの手をやかせた。そのあいだも、高氏は駒の背から二度三度、妻子のほうをふりかえった。彼は、えぼしをかぶって、かぶとは背に負い、旗もとたちの騎馬にかこまれてすぐ兵列のうちに没し去った。その良人の背のかぶとは、どんなに重たかろうぞと、妻には見えた。
この日、路傍の見物も少なくはなかったが、さきの佐々木道誉が出勢の華やかさとは、比かくにならぬ地味で黒っぽい陣装いであり、町の眼も歓呼に弾むことはなかった。