Japanische Klassiker mit Furigana
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だっせんむすこ
脱線息子
佐々木 邦
Lesen Sie 脱線息子 (だっせんむすこ) von 佐々木 邦 (ささきくに) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.293 Zeichen · 221 Bildschirme
「はあ」
「私も東京です。私は道楽で来ていますが、あなたは御休養ですか?」
「えゝ、少し神経衰弱をやりまして」
と新太郎君は逗子でも都合によっては神経衰弱を利用する。
「然うですか。それはいけませんな」
「何あに、大したことはありません」
「一つ神経衰弱の直る妙法を伝授しましょうか?」
「承りましょう」
「これです」
「何れですか?」
「これですよ」
と老人は釣竿を動かして見せた序に引き上げたら、河豚の子が釣れていた。
「それを喰べれば死にましょう?」
「いや、これは毒です。釣魚が神経衰弱の薬なんです」
「はゝあ」
「釣魚ぐらい気の紛れるものはありませんよ。斯うやって一本の糸に心を打ち込んでいると、苦痛も何も忘れてしまいます。無念無想って奴ですな。同時に海辺の好い空気を吸う。運動にもなる。私も神経衰弱をやって長いことブラ/\していた揚句、人に勧められて釣魚を始めたのです。これくらい自然に叶った療法はありませんな。御覧なさい。この辺の漁師達は始終釣魚をやっていますから、決して神経衰弱に罹りません」
「成程」
と新太郎君は相槌を打って傾聴の態度を取った。老人の説によると、釣魚は啻に神経衰弱の自然療法ばかりでない。