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Japanische Klassiker mit Furigana

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かつしかみやげ

荷風随筆集(上)

永井 荷風

Lesen Sie 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.224 Zeichen · 269 Bildschirme

Aozora Bunko

しかし万国博覧会も例の日本人の空景気で金がない処からおじゃんになり、従って鮫ヶ橋も今日なお取払われず、西念寺の急な坂下に依然として剥ちょろのブリキ屋根を並べている。貧民窟は元より都会の美観を増すものではない。しかし万国博覧会を見物に来る西洋人に見られたからとて何もそれほどに気まりを悪るがるには及ぶまい。当路の役人ほど馬鹿な事を考える人間はない。東京なる都市の体裁、日本なる国家の体面に関するものを挙げたなら貧民窟の取払いよりも先ず市中諸処に立つ銅像の取除を急ぐが至当であろう。

現在私の知っている東京の閑地は大抵以上のようなものである。わが住む家の門外にもこの両三年市ヶ谷監獄署後の閑地がひろがっていたが、今年の春頃から死刑台の跡に観音ができあたりは日々町になって行く、遠からず芸者家が許可されるとかいう噂さえある。

芝浦の埋立地も目下家屋の建たない間は同じく閑地として見るべきものであろう。現在東京市内の閑地の中でこれほど広々とした眺望をなす処は他にあるまい。夏の夕、海の上に月の昇る頃はひろびろした閑地の雑草は一望煙の如くかすみ渡って、彼方此方に通ずる堀割から荷船の帆柱が見える景色なぞまんざら捨てたものではない。