Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
しょうたく
荷風随筆集(下)〔全2冊〕
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(下)〔全2冊〕 (しょうたく) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.633 Zeichen · 74 Bildschirme
先生はお妾が食事の仕度をしてくれる時のみではない。長火鉢の傍にしょんぼりと坐って汚れた壁の上にその影を映させつつ、物静に男の着物を縫っている時、あるいはまた夜の寝床に先ず男を寝かした後、その身は静に男の羽織着物を畳んで角帯をその上に載せ、枕頭の煙草盆の火をしらべ、行燈の燈心を少しく引込め、引廻した屏風の端を引直してから、初めて片膝を蒲団の上に載せるように枕頭に坐って、先ず一服した後の煙管を男に出してやる――そういう時々先生はお妾に対して口には出さない無限の哀傷と無限の感謝を覚えるのである。無限の哀傷は恐ろしい専制時代の女子教育の感化が遺伝的に下町の無教育な女の身に伝っている事を知るがためである。無限の感謝は新時代の企てた女子教育の効果が、専制時代のそれに比して、徳育的にも智育的にも実用的にも審美的にも一つとして見るべきもののない実例となし得るがためである。無筆のお妾は瓦斯ストーヴも、エプロンも、西洋綴の料理案内という書物も、凡て下手の道具立なくして、巧に甘いものを作る。それと共に四季折々の時候に従って俳諧的詩趣を覚えさせる野菜魚介の撰択に通暁している。