Japanische Klassiker mit Furigana
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みつのあわれ
蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ
室生 犀星
Lesen Sie 蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ (みつのあわれ) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 88.662 Zeichen · 174 Bildschirme
」
「まアちょっと開けて見たまえ。」
「開かないわ、錆びついているのよ、ええ、ぎゅっと捩って見るわ、やっと開いたけど、手巾とバスの回数券と、それに香水の瓶がはいっているきりよ。」
「バスの回数券があるの、ふうむ。」
「何処かにお勤めになっていらっしったのね。」
「さあ、どうかな。」
「どうして回数券なんか、要るんでしょうか。」
「よく見たまえ、この回数券は戦前もずっと前の、藍色の表紙じゃないか、あと三枚きりしかない。こんな物いまどき通用するもんかね。」
「あきれた。」
「くわせものだよ、きみが勝手に作り上げたおハナシなんだ。およし、こんな事を企んでおじさんを困らせるのはお止し。」
「だってあたい、実際、田村さんの手をうんと握って見たもの、講演会の時よりか、ずっとふとっていたわ。」
「庭で俟っているの。」
「そんな約束なのよ、きょうは間違いはないのよ、あたい、騙されるのいやだから、先刻ね、手を痛い程握ったときに髪の毛を二三本噛み切ってやったわ、ほらね、これ、本物の髪なんでしょう。」
「髪だね。」
「でも、人間の髪にまちがいないでしょう、つやといい、ウエーヴのかかっている工合といい、……」