Japanische Klassiker mit Furigana
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きく
親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選
山川 方夫
Lesen Sie 親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選 (きく) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 67.486 Zeichen · 144 Bildschirme
このまま一人きりの下宿に向うなんて、わびしすぎる。
「運転手さん、すまないが方向をかえて、原宿へやってくれよ」と、彼はいった。原宿には、ときどき彼が泊る年上のあまり売れぬ女優の部屋があった。
そのアパートのすぐ手前で彼は車を捨てた。二月ぶりくらいかな、思いながら裏階段を女の部屋へのぼって行き、合図のノックをした。しかし、いくら戸を叩き、ベルを押しても、ひっそりと真暗なその部屋には、なんの気配もない。どうやら、女は不在だった。
ついてねえな、つくづく。彼は舌打ちをした。部屋の主は、今夜はきっとどこかのベッドでお休みになっているのだろう。どんな男ともつれあっているのか、そんなことはどうでもいい、とにかく、ここの塒も今夜はふさがっているというわけだ。
円い月が空にかかり、青白い花束のような月光が家々の屋根に砕けている。見ると腕時計は三時だった。いよいよいけなかった。三時を過ぎてしまうと、早起きをまるで趣味のようにしている下宿の老人夫婦は、いくら怒鳴ってもまず絶対に戸を開けてはくれない。
しょうがねえ、まさにシャット・アウトだ、と彼は思った。すべての温い夜はおれを拒み、すべての巣はおれに戸を閉ざしている。