Japanische Klassiker mit Furigana
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きく
親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選
山川 方夫
Lesen Sie 親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選 (きく) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 67.486 Zeichen · 144 Bildschirme
意識は明瞭だが、五官の感覚がほとんどなく、あとは死を待つほかはないのだ。医者は、最大限一年しかもたないと明言した。その一年の期限が、もはや目の前に来ている。
部屋がむしむしする。彼はハンカチで汗をふいた。わざと明るい声でいった。
「うらやましいよ。暑さ知らずだなんて」
女は、目のすみでちらりと彼に笑った。
「そうね。いまに文化が進歩して、人間たちが気温を一定に調節して、この世から夏や冬を追放することになるのかもしれない。……私、そんな未来の国に住んでいるみたいね」
「そうさ」と、彼もいった。
「そうしたら、夏や冬は、季節の名前じゃなく、土地の名前になっちまうさ。金持ちだけがそれを味わいに出かけて行く、遠い土地の名前に」
「夏や冬は、つまりぜいたく品になるのね」
笑って、女は目をつぶった。
「……でも、夏は、もう私にははっきりとは思い出せない。夏、夏っていくら考えても、なにか子供のころに聞いた海岸の物音みたいな遠いぼやけた思い出しか、私にはもう浮かばないの。……ねえ、夏って、どんなものだったの? 暑いって、どんなことなの?」
青く血管の透けるような白い頬で、女は、でも、固く目を閉ざしていた。