Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

おやばかにゅうどうき

親馬鹿入堂記

尾崎 士郎

Lesen Sie 親馬鹿入堂記 (おやばかにゅうどうき) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.182 Zeichen · 24 Bildschirme

Aozora Bunko

三月下旬だったか、ある日の夕方、私は、私の疎開地である伊東の漁師街に住む鈴木福男という青年の来訪をうけた。雨の日だったことをハッキリおぼえている。彼は私の出てくるニュース映画を街の映画館で見たことを報告に来たのである。

当時の私は、慢性胃潰瘍のために、見るかげもなく痩せおとろえてしまっているし、それがために一日の大半は胃の幽門部に鈍痛をおぼえ、それが、しばらくつづいたと思うと、こんどは濡れ手拭をしぼりあげるような急激な痛みに変ってくる。頬はこけ、眼の下にふかいたるみが出来た上に、皮膚の色はどす黒く濁っていた。鏡を見るごとに味気なさが身に沁みるようである。十六貫あった体重が、やっと十貫そこそこになり、少し風のつよい日に川ぞいの道を歩いていると、うしろから吹きつける風に煽られて身体ぐるみ宙に浮いたまま、二三歩前へよろけてから、やっと踏みとどまる癖がついてしまった。

私は、鈴木君からニュース映画のはなしをきいて、おそらく自分の顔が写真にうつるのもこれが最後であろうと思った。それに、明日になったら妊娠中の女房を入院させようと思って準備していた矢先だったので、私は女房をつれて自分の出てくるニュース映画を見ようという気持になった。