Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうしゅうのしじん よさぶそん
郷愁の詩人 与謝蕪村
萩原 朔太郎
Lesen Sie 郷愁の詩人 与謝蕪村 (きょうしゅうのしじん よさぶそん) von 萩原 朔太郎 (はぎわらさくたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.038 Zeichen · 78 Bildschirme
何よりも彼の心は、そうした「家郷」が欲しかったのだ。それ故にまた
柚の花やゆかしき母屋の乾隅
と、古き先代の人が住んでる、昔々の懐かしい家の匂いを歌うのだった。その同じ心は
白梅や誰が昔より垣の外
という句にも現れ
小鳥来る音うれしさよ板庇
愁ひつつ丘に登れば花茨
などのロセッチ風な英国抒情詩にも現われている。オールド・ロング・サインを歌い、炉辺の団欒を思い、その郷愁を白い雲にイメージする英吉利文学のリリシズムは、偶然にも蕪村の俳句において物侘しく詩情された。
河豚汁の宿赤々と灯しけり
と、冬の街路に炉辺の燈灯を恋うる蕪村は、裏街を流れる下水を見て
易水に根深流るる寒さかな
と、沁々として人生のうら寒いノスタルジアを思うのだった。そうした彼の郷愁は、遂に無限の時間を越えて
凧きのふの空の有りどころ
と、悲しみ極まり歌い尽さねばならなかった。まことに蕪村の俳句においては、すべてが魂の家郷を恋い、火の燃える炉辺を恋い、古き昔の子守歌と、母の懐袍を忍び泣くところの哀歌であった。それは柚の花の侘しく咲いている、昔々の家に鳴るオルゴールの音色のように、人生の孤独に凍え寂しむ詩人の心が、哀切深く求め訪ねた家郷であり、そしてしかも、侘しいオルゴールの音色にのみ、転寝の夢に見る家郷であった。