Japanische Klassiker mit Furigana
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つげびと
野菊の墓
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓 (つげびと) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 34.955 Zeichen · 71 Bildschirme
涙がいつのまにかまぶたをうるおしていた。
糟谷がぼんやりしていると、場長はじめおおくの事務員は、みんな書類をかたづけて退場の用意をする。そのわけがわからなかったから、糟谷はうろたえてきょろきょろしている。ようやくのこと人びとの口気できょうの土曜日というに気づいた。糟谷はいまがいままできょうの土曜日ということを忘れておったのだ。
糟谷は土曜と知って目がさめたようにたちあがった。なるほどそうであったな、すっかり忘れていた、とにかく都合がえい、それではきょうさっそく上京して、あの人に相談してみよう、時重先生が心配してくれ、きっとどうにかなる、東京にいることになれば位置が低くても勉強ができる、なるべく非職などいう辞令を受け取らずに、転任したいものだ、飯くってすぐとでかけよう。
糟谷はこう考えがきまると、よろめく足をふみこたえたように、からだのすわりがついた。ふみだす足にも力がはいって、おおいに元気づいて家に帰ってきた。
「とんちゃんとんちゃん」
という声も、いつものごとくにかわいかった。
糟谷が芳輔を抱いて奥へあがるとざる碁仲間の老人がすわりこんでいる。
「きょうは先生、ぜひとも先日の復讐をするつもりでやってきました。