Japanische Klassiker mit Furigana
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つげびと
野菊の墓
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓 (つげびと) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 34.955 Zeichen · 71 Bildschirme
こうすこしぽかぽか暖かくなってきますと、どうも家にばかりおられませんから」
老人は糟谷の浮かない顔などにはいっこう気もつかず、かってに自分のいいたいことをいっている。糟谷は役所着のままで東京へいくつもりであるから、洋服をぬごうともせず、子どもを抱いたまま老人と対座した。
「これはせっかくのご出陣ですが、じつはそのちょっと東京へいってくるつもりで……はなはだ残念だが……」
「いやそりゃ残念ですな、日帰りですか」
「今夜は帰れません」
「それじゃきょうじゅうに東京へいけばえい。二、三席勝負してからでかけても遅くはない。うまくいって逃げようたってそうはいかない」
農家の楽隠居に、糟谷がいまの腹のわかるはずがない。糟谷はくるしく思うけれど、平生心おきなくまじわった老人であるから、そうきびしくことわれない、かつまたあまりにわかに変わった態度をして、いまの自分の不安心をけどられやせまいかというような、あさはかなみえもあった。
とうとう二、三盤打つことにした。人間も糟谷のような境遇に落つるとどっちへむいても苦痛にばかり出会うのである。
糟谷はその夕刻上京して、先輩時重博士をたずねて希望を依頼した。