Japanische Klassiker mit Furigana
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いさん
銀座復興 他三篇
水上 滝太郎
Lesen Sie 銀座復興 他三篇 (いさん) von 水上 滝太郎 (みなかみたきたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 40.579 Zeichen · 82 Bildschirme
おときはその柿の木を指さして、この寺内に果樹の多い事が、いかに自分達夫婦の心を楽しくさせるかを梵妻に話した。
「へええ、相原さんはそんなにも植木が御好きなんですか。それでもあの柿は見かけばかりで渋柿なんですよ。」
梵妻も、西日にてらてら光っている柿の実の鈴生りに生っている梢を見上た。
「まあ、あんなに大きな見事な柿が渋いんですか。」
あれ程赤く熟したのが渋いとは全く思いもかけなかったので、おときは何のわだかまりもなく目をみはった。
「ええほんとに見かけ倒しなんですよ。渋いの渋くないのって。」
「おやおや、それじゃあ喰べられないのですか。」
「喰べられるもんですかね。」
梵妻は現在口の中が渋くて堪らなそうに、大きな先の太い鼻を中心にして顔中をしかめた。その様子が真に迫っていると云って、おときは背中を車海老のようにして笑った。
その日新吉が帰って来て、差向で楽しい食事をした後で、いつもの通り縁側に蒲団を並べて茶を飲みながら、おときは庭前の柿が渋柿だという事を伝えた。
「そうかしら、僕はそうは思わなかったがなあ。」
新吉は腑に落ちない様子で、暮残る空に柿の実のつぶつぶ数えられるのを見上て、首を傾けた。