Japanische Klassiker mit Furigana
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いさん
銀座復興 他三篇
水上 滝太郎
Lesen Sie 銀座復興 他三篇 (いさん) von 水上 滝太郎 (みなかみたきたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 40.579 Zeichen · 82 Bildschirme
二
ただならぬ男の語気に、身をかたくして振向いた相手の視線に射られて、澤は言葉が詰ってしまった。こんな事では駄目だぞと思いながら、どんな態度も、どんな言葉も、この場合芝居めいておかしいものに考えられ、唇はすっかり乾いてしまった。
暫時の間、無言のまま、お互の呼吸を感じながら、二人は顔を見合っていた。
「澤さん。」
気力負けして、足下の砂地に澤が視線を落した隙を見て、余程たってから養子の方が口を切った。
「私は犯罪人の娘ですよ。」
驚いて澤が顔を上げた時、養子は強いて笑おうとしたらしかったが、笑うだけのゆとりがなく、いきなり土砂降の雨の中を、別荘の方に駆出した。
しまったと思いながら、澤も直ぐ後から駆出した。
別荘の門を入る時には、雨はぱったり止んで、又まんまるい月が、けろりとした顔をして、滞りなく晴れた中空の風に吹かれていた。
「養子さん、櫛あって。」
「遅かったわねえ、濡れちゃったでしょう。」
気づかっていた姉妹が縁側に出迎えた時、二人ともずぶ濡になって着物の吸いつくようにぴったり肌にくっついたままの姿で、せいせい息を切らしていた。
二
九月朔日の朝は、南風が真当面に吹きつけて、縁側の硝子戸を閉めると蒸暑く、あけると部屋の中のものが舞上って為方がなかった。