Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しほんたいへいき
随筆 私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 私本太平記 (ずいひつ しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.947 Zeichen · 114 Bildschirme
総じて文学価値としては古典平家の方が太平記よりも上だとおもう。けれど人間社会のけわしさとか、個々の苦闘とか、また歴史上の日本という国の未成年期山脈をふみ越えて来た祖先たちのあとを振向いてみるものにしては、平家の世頃とは、比較にならないものがある。それだけに、小説としても、生々しい人間臭をもつとおもう。
しかし、これまでの太平記や、いわゆる南北朝概念では、足利尊氏にしろ新田義貞にしろ、また正成正行父子にしろ、誰の観念の中にも、人間としてはいない。極端なまでに偶像化されたままである。こころみに、私は周囲の高校生や大学初期の若い人たちに試問してみたが、ほとんどがよくもわるくもそれらの史上の人物について知るところがない。わけて、日本の中世歴史中でも重要な五、六十年間において、どんな風に、この国があったのか、北朝、南朝などと分れていたのか、そんな社会の下の庶民や文化の生態はどうなっていたのかなど、中年以上の人でも、今ではすこぶるあいまいになっている。そしてこのあいまいな歴史の密林にたいして、ただ一種の懐疑だけをもっているのが実状ではなかろうか。
ほんとをいえば、そんな深い史林の奥は、私にもわかっていない。