Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しほんたいへいき
随筆 私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 私本太平記 (ずいひつ しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.947 Zeichen · 114 Bildschirme
その十六
弱ったネ。なるべく、ほのかに描いて欲しいなあ」
帝と小宰相、帝と廉子。あの黒木の御所の一夜なども、筋小説としてすますなら、書かないでもすむことである。けれど現代人心理からは、ああした島暮らしの中での、一夫三妻のような形はいったいどうなのか。そこへまで立ち入らずには読めない感を伴うにちがいない。
ほんとならその辺も、もっと突っこんで、近来の“一夫多妻論”や“一夫一婦尊重論”などに答えることもできようが、それは私本太平記の途上ではいたずらな構成のアンバランスになりかねないのだ。こんな長篇の構成では、渚に興味をひかれてもあくまで大河のまにまに棹さしてゆくしかない想いをやむなくするのである。さしずめ読者は長江の乗客であろうか。なんとも同舟のご辛抱こそ感謝にたえない。(三四・九・五)
その十六
私は小説家だが、どうも今日は朝から小説が書けない。恥かしいが私は真の芸術家、芸術至上主義者ではないらしい。
といって一回分でもアナにするわけにはゆかず、この筆間茶話で今日の分は埋めることにした。醜態だが、理由はただやりきれないためである。――予報には、明日晴れとあるが、分裂したはずの十六号颱風の影響か、ゆうべからの雨は今日も一日じゅう窓外を打ッている。