Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しほんたいへいき
随筆 私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 私本太平記 (ずいひつ しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.947 Zeichen · 114 Bildschirme
その二十七
私たち一行は、ちょうど、終戦時の進駐軍みたいに見物された。おじいさん、娘さん、おばあさん、学校の生徒、おかみさんらの物珍しげな人だかりである。その中で健吉さんが「これ、これ」と、さっそく写生帖をひろげてスケッチし出す。
“足利尊氏産湯の井戸”と札がある。つまりここは、尊氏の生母上杉清子の出生地であり、また尊氏も、幼時をここで送ったという伝説のある郷なのだ。(三六・四・二)
その二十七
梅迫へは、来てよかったと、あらためて思った。
尊氏の産湯ノ井戸などは、まあまあとしても、上杉清子の輪郭は、ここへ来て初めてつかめてくるものだった。従来の正史や尊氏伝記ではよくわからなかった一女性が、隠されていた藪梅みたいに訪問者へホホ笑みかける。
このへんは上杉領となるいぜんからの上杉ノ郷であったらしい。――修理ノ大夫藤原重房が鎌倉幕府からこの地を受けたときから――家名も上杉家と称えたものといわれている。尊氏を産んだ清子は、後の上杉頼重の娘であった。
足利家の飛領の篠村とここは遠くない。両家の姻戚関係が生じたわけもわかるし、尊氏に公卿の血がながれていたことにもためらいなくうなずかれる。