Japanische Klassiker mit Furigana
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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
Lesen Sie 雑居家族 (ざっきょかぞく) von 壺井 栄 (つぼいさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 140.106 Zeichen · 283 Bildschirme
そしてその感覚の余波に酔ってうっとりとなり、やがて起きあがった時、浜子のかたわらに男はもういなかった。はっと思わぬでもなかったが、後悔する気は全然なかった。心の奥の方に、あいこじゃないか。とささやく声があった。浜子は勝気に笑おうとした。さすがに笑えはしなかったが、苦々しいこととは思えなかった。さっきまで楽しかった気持のきりかえが、そう急にはできなかったのかもしれぬ。時がたってもその考えは大して変わらなかった。ある日の思い出として、だれにもいわずに、心の奥にしまっておくつもりだったのに、あいこのはずのそのたわむれが、瞬間の享楽の責任を女にだけおわしたのだ。あいこではなかった。浜子ははじめてあわて出し、あらゆる手さぐりの知識を総動員して、責任の不平等をくみ伏せようとあせった。だれもいない時、二階の階段を五段ほどとんでみた。行水をつかうふりして、水のたらいに腰をつけてもみた。心を卑しくして、進君と結ぼうとした。働いていると見せかけて、終日を山手線の電車にのってもみた。みんなだめだった。
そんないやらしい過去の一さいが、きょうはぬぐわれるのだと思って床次医院のドアを押したのだが、五六人いた先客の患者にならって、殊勝な顔つきで、診察室へはいっていったとき、もうすでに、彼女の神経は対抗的になりかかっていた。