Japanische Klassiker mit Furigana
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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Lesen Sie 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.271 Zeichen · 263 Bildschirme
何、唯った一度ですよ。」
「そうか。併し狭い土地だから、お前が角川の息子だと云うことは、先方でも知ってるだろう。あんな許へ余り出入するなよ。世間の口が煩さい。」
「そうですとも……。あんな家へは決して二度と足踏は為ませんよ。」と、市郎は潔よく答えた。が、何を思い出したか、嫣然笑いながら、「それでも忠一君は彼の女に思惑でも有ったと見えて、頻に戯って騒いでいましたよ。」
「若い者には困るな。」と、安行も共に笑いながら、「あれは酌婦だろう。何という名だ。」
「たしかお葉と云いました。」
「お葉か。忠一が今度帰ったら冷評て与ろうよ。」
「詰らない。お止しなさいよ。あれでも表面は真面目なんですから……。」
「それだから戯って与るんだ。」
斯ういう暢気な親父が、何故山なんぞを恐れるのだろうと、市郎は不思議に思いながら、不図顧ると、自分達の後を追って来たトムの姿が見えない。
はて、何処へ行ったかと見廻すと、犬は彼の柳屋の前に止って、お葉から何か食物を貰っているらしい。
「トム、トム……。」と、二三度呼んだが、犬は食物に気を奪られて、主人の声を聞付けぬらしい。市郎は舌打しながら引返して来た。