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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひだのかいだん

飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選

岡本 綺堂

Lesen Sie 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.271 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

(六十)

」

二輪の花を折って縁側に列べると、重太郎は其の一個を取った。

「紙に包んで上げよう。」

お葉は白い紙に紅い花を軽く包んで渡すと、重太郎は菓子を貰った小児のように、莞爾しながら懐中に収めた。

「お前さん、これから何うするの。」

「宝物を持出して何処かへ行くんだ。」

「宝物ッて、金の兜じゃア無いの。」

「むむ、何でも其んなものだ。」

「そりゃア既う駄目。警察の方で引揚げて了ったと云うことよ。」

「そうかい。」

重太郎も驚いて声を揚げた。其声が度外れに高いので、お葉は慌てて四辺を顧った。

(六十)

母に別れ、棲家を失った今の重太郎に取って、唯一の依頼というのは彼の尊き宝であった。それを手に入れたいばかりで、彼は厳重なる警官の眼を潜りつつ、今日まで此の辺を漂泊っていたのである。而も其の希望の光は今や消えた。

「俺ア矢ッ張り乞食をするより他は無いんだなあ。」と、彼は泣かぬばかりに嘆息した。実際、彼は泣くにも泣かれぬ絶望の淵に沈んだのである。

「ほんとうに可哀そうだねえ。」と、お葉も共に嘆息した。親戚も無し、職業も無し、金も無い此の人が、これから他国を彷徨いて、末は何うなることであろう。