Japanische Klassiker mit Furigana
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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Lesen Sie 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.271 Zeichen · 263 Bildschirme
ここらの山に獣が出ますか。
重兵衛 むかしは狼が出たとか、猪や熊も出たとか云うことですが、今じゃあ何が出るもんですか。唯ときどきに猿が出て来て、油断をしていると食い物を盗んで行く位のことですよ。
旅人 (安心したように。)そうですか。それじゃあ夜道も安心だ。(窓のかたを見かえる。)今夜は好い月ですね。
重兵衛 旧暦の十三夜ですよ。(思い出したように笑う。)眼の前に薄は沢山生えていながら、今夜は供えるのを忘れてしまった。
旅人 十三夜ですか。(考える。)先月の十五夜は……ここらも好い月でしたか。
重兵衛 いい月でしたよ。
旅人 (何かの感慨に耽るように。)東京もいい月でした。
重兵衛 あなたは東京でしょうね。
旅人 ええ、まあ、そうです。
重兵衛 今歌って来たのはあなたでしょう。
旅人 聞えましたか。いや、どうも……。(きまりが悪そうに頭を撫でる。)実はあんまり寂しいので、聞きかじりの小唄を出たらめに、はははははは。
重兵衛 わたしは田舎者でなんにも判りませんが、あなたは中々いい喉のようですね。
旅人 冗談でしょう。人通りのない山の中だから遠慮なしに大きな声を出したので……。