Japanische Klassiker mit Furigana
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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Lesen Sie 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.271 Zeichen · 263 Bildschirme
」
七兵衛は息を切って制したが、お葉は唯冷笑うのみで何とも答えなかった。余りの意外に驚いたのであろう、冬子は声をも立てなかった。
「これ、馬鹿為るでねえ。放さねえか。」と、七兵衛は無理に其手を引放そうとしたが、お葉の握った拳は些とも弛まなかった。彼女は冬子の前髪を掴んだままで、凝と対手の顔を睨んでいた。
寂しいと云っても往来である。この騒ぎを見て忽ち五六人駈け付けた。材木置場からも職人が駈出して来た。大勢寄って兎も角も二人を引き起したが、何うもならぬのはお葉の手であった。彼女の石の如き拳は、如何までも冬子の黒髪を握り詰めて放さなかった。
大勢は声を揃えて「放せ」と叫んだが、お葉の口は決して答えなかった。大勢が力を協せて、無理に引放そうとしたが、お葉の拳は決して開かなかった。彼女は黙って冬子の髪を掴んでいるのである。
打っても叩いても仕方がない。此上は、お葉の白い手を切るか、冬子の黒い髪を切るか、二つに一つを択ぶの他は無かった。
「強情な阿魔だなあ。」
何れも惘れて顔を見合せている処へ、この騒ぎを聞いて市郎も奥から出て来た。人々から委細の話を聴いて、彼も驚かずには居られなかった。