Japanische Klassiker mit Furigana
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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Lesen Sie 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.271 Zeichen · 263 Bildschirme
(十七)
お葉の傍へ進み寄って、
「お前、何故そんなことをするんだ。」
お葉は初めて口を開いた。
「此女はあなたのお嫁さんでしょう。」
市郎は返事に困った。
「妾、死んでも放しませんよ。」
実際、死んでも放すまいと思われた。掴まれた冬子はと見れば、不意の驚愕と恐怖とに失神したのであろう、真蒼な顔に眼を瞑じて、殆ど息も為ない。酔も漸次に醒めたと見えて、お葉の顔も蒼くなって来た。
見物人は追々に殖えて来た。柳屋のお清も駈けて来たが、唯わやわや云うばかりで手の着様がない。其雑踏を掻き分けて、ぬっと顔を出したのは彼のお杉婆であった。彼女は例の如く黄い歯を露出して笑っていた。
(十七)
前にも云う如く、お葉が角川家の前に来たのは、別に深い意味があるのでは無かった。※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)の一件が意にかかるのと、二つには何と無しに此地の方へ足が向いたと云うに過ぎないのである。けれども、彼女は酔っていた。酔に乗じて種々の捫着を惹起している中に、折悪くも其処へ冬子が来合わせたので、更にこんな面倒な事件を演出す事となって了った。
恋の仇と睨まれた冬子の災難は云うまでもないが、市郎もこれには頗る弱った。