Japanische Klassiker mit Furigana
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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Lesen Sie 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.271 Zeichen · 263 Bildschirme
が、其顔は生ける日と些とも変らず、極めて平和な温順な人相を現わして、斯る変死者に往々見る所の苦痛や煩悶の死相は少しも見えなかった。父は恐く不意に殺されたのであろう。父は怖るべき危害の迫り来るを予知せずに突然死んだのであろう。
市郎は蝋燭を岩の罅間に立てて、一先ず父の亡骸を抱き起したが、脈は疾うに切れて、身体は全く冷えていた。併し一通り見た所では、何処にも致命傷らしい疵の痕は無かった。多分この岩の上へ突き落されて、脳震盪を起して死んだのではあるまいか。勿論、これとても想像に過ぎない。
「阿父さん……。」
切てもの心床しに、市郎は父の名を呼んだが、魂魄の空しい人は何とも答えなかった。
「阿父さん……。」
彼は再び呼んだ。呼んで返らぬとは知りながら、再び呼んだのである。
市郎は一人児であった。小児の時に生の母には死別れて、今日まで父一人子一人の生涯を送って来たのである。父は年齢よりも若い、元気の好い人であった。わが子に対っても平気で冗談を云うような人であった。加之も我子を又無く愛する親であった。遠からず我子に嫁を迎えて、自分は隠居する意の親であった。
この父と子と突然に別離を告げたのである。