Japanische Klassiker mit Furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Lesen Sie ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) von 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.905 Zeichen · 262 Bildschirme
好事はとかく邪魔がはいる――人の世の習いとやら。しかしその時分には、画家もさすが、残り惜しさは隠せぬままに、ホーッと長い息を吐くと、いくぶん肩の荷が軽くなった、と言うほどのくつろぎを顔に浮べて、とうとう筆を投じた。――画はどうやら、出来上ったと思われるのに、しかし満足らしい彼の表情は、予期に反して、ほとんど見られなかったのが、気にかかる……。
荷をまとめ終った彼は、俺にも、四辺の風物にも、又雨を降らす天空にまで、いちいち丁重に頭をさげて、しばらくは眼を閉じたまま、物を念ずる態であった。これはまさしく、深い感謝をあらわし、また訣別を告げ、かつは後会を期する意味のものと解されたが、同時に彼の睫毛に、怪しく光るものが宿った――と見たのは、果して俺の気のせいか、ただしは、霧雨のしずくだったか……。
もとより俺もまた、万感をこめて、満身の露をはふり落しつつ、これにこたえた。そのくせ、おかしなことに、ぬれそぼった画家のうしろ影が、重そうな足どりで、煙雨に消されてゆくのを見送っているうち、いつの間にやら、まるきりぼんやりしてしまったらしい俺は……どのくらいたってからか、急に、うそ寒いような、一種の寂寥感に襲われて、ハッとわれに帰った。