Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あるはいまつのどくはく

ある偃松の独白

中村 清太郎

Lesen Sie ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) von 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.905 Zeichen · 262 Bildschirme

Aozora Bunko

三月を迎えて、四日の日記は「十日くらいの月さやか。悪沢岳の銀の兜めがけて、大流星、半天をつんざき、異様な血紅色の光輝を、ほとばしらせて落つ。アンドロメダの辺なり。不二鮮かに、頂上の両端し、角張って見ゆ。白峯、秩父はおぼろ。四山すべて、雪に明るし、云々。」とある。それから後が、又吹雪。だがそれがやむと、また好日が続いた。初めて、軒のしずくで立てた、風呂にひたる。さすがに、肌ざわりがやわらかい。氷を抱く荒ら行は果てた。煮炊きも、もう楽だろう。

八日など、いかにも春めいた日で、日記の一節に、「満月どんより。不二はふかぶかと、雲の三蓋笠をいただき、その陰から銀の長髪が乱れる。風起り、雲散ず。早朝に似た効果。ただ嘘のように小さい。」また九日には、「雪降る。しかも陽気はすこぶる温暖。机上に、青磁いろの、尺とり蛾が一羽舞い来り、触角を痛々しく、神経的に顫るわす。」続いて十日には、「春風吹き、雨初めて降る。」と記され、さらに十一日は、「おぼろの月光寒からず。富士黒く、大きさ昼に近し。月に向う輪廓に沿い、空に微光を認む。雪の反射か、月に映ずる雪煙か、乃至は水蒸気か。