Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あるはいまつのどくはく

ある偃松の独白

中村 清太郎

Lesen Sie ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) von 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.905 Zeichen · 262 Bildschirme

Aozora Bunko

折尾の岩小屋はよかった。大巖の背を、また大岩が覆って、ふところはかなり広く深く、前は両岸とも大盤岩の廻廊となって、むこうの折り重なった、山の毛脛の間から間へ、黒部の本流は岩に咆えつき、噛みつき、もんどり打って転び走り、扱かれて砕かれて、滝になったり、淵になったりして、消えて行く……。狭い谷じゅうが、わんわん鳴りひびき、水が鳴っているのか、岩が鳴っているのか、水が動いているのか、岩が動いているのか、分らないくらい。お互い話しをしてもなかなか通じないし、じっと見ていると、眼が迷わされるか、動くはずのない大岩盤が、むくりむくりと揺るぎ出して、ちょうど大きな艦船が走り出したさまにも似ている。

いつか、「山の覚え書」(前著「山岳渇仰」にあり)の中に書いた、動きそうもないのに動くもの、あれとは少しちがうが、この岩の動きもその縁類とは言えよう。いちばん近いのは、瀑布の場合で、しばしば経験する所だが、渓流においては、まったく珍らしいようだ。私もこんなのは初めてだった。いかに流れの激越であるかがわかると思う。とにかく、谷中が不思議に生きて活動している。疲れたのと、気に入ったのと両方で、ここに一日滞在したが、この行で一ばん感銘の深かった所、と言っていいだろう。