Japanische Klassiker mit Furigana
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おごそかなかわき
おごそかな渇き
山本 周五郎
Lesen Sie おごそかな渇き (おごそかなかわき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.042 Zeichen · 71 Bildschirme
こんなに狭い日本の、せせこましい、お互いの鼻のつかえるような国土の中で、言葉や風習の違いがあり、或る県人と或る県人との、ぬきがたい気質の対抗がある。ばかげたはなしだ、と松山隆二は思った。
――いや、そうではない、ばかげているだけではない、と彼は思い直した。どんなにばかげたことのようにみえても、それは現にあるのだし、現にあるということは、そこになにかの意味があるにちがいない、憎悪や敵意もそのままではなんの価値もないが、互いに対抗するとき、そこになにかが生れるのではないか。
サタンがヨブをいためつけたからこそ、ヨブの信仰心が慥かめられたように、と松山隆二は思った。
「どうしたのおじさん」
「え、――ああ」彼はりつ子に微笑してみせた、「なんでもないよ、明日になったら、山の炭焼き場へいってみようかね」
翌日、彼はりつ子に案内してもらって、山の炭焼き場まで登っていった。笹やぶや灌木林をぬけてゆくと、あたりがにわかに明るくなり、枯れた芒や小松のある、稲妻形になった傾斜の急な、踏みつけ道を登ってゆくあいだ、彼は幾たびも枯草に腰をおろして休んだ。その幾度めかに、五六羽の小鳥が、鳴きながら二人の頭上を飛び去った。