Japanische Klassiker mit Furigana
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こころ
こころ
Lesen Sie こころ von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.915 Zeichen · 322 Bildschirme
「そう理屈をいわれると困る」
父は苦い顔をした。
「何もお前のためにするんじゃないとお父さんがおっしゃるんじゃないけれども、お前だって世間への義理ぐらいは知っているだろう」
母はこうなると女だけにしどろもどろな事をいった。その代り口数からいうと、父と私を二人寄せてもなかなか敵うどころではなかった。
「学問をさせると人間がとかく理屈っぽくなっていけない」
父はただこれだけしかいわなかった。しかし私はこの簡単な一句のうちに、父が平生から私に対してもっている不平の全体を見た。私はその時自分の言葉使いの角張ったところに気が付かずに、父の不平の方ばかりを無理のように思った。
父はその夜また気を更えて、客を呼ぶなら何日にするかと私の都合を聞いた。都合の好いも悪いもなしにただぶらぶら古い家の中に寝起きしている私に、こんな問いを掛けるのは、父の方が折れて出たのと同じ事であった。私はこの穏やかな父の前に拘泥らない頭を下げた。私は父と相談の上招待の日取りを極めた。
その日取りのまだ来ないうちに、ある大きな事が起った。それは明治天皇のご病気の報知であった。新聞紙ですぐ日本中へ知れ渡ったこの事件は、一軒の田舎家のうちに多少の曲折を経てようやく纏まろうとした私の卒業祝いを、塵のごとくに吹き払った。